笠間焼の作家 田山健司さん
笠間市のやきもの通りで「焼き〆と粉引の器」という看板を出している田山さん。作品について解説していただきました。
「焼き〆とは成型して乾燥させた素地に釉薬をかけずに焼く技法です。窯で焼くときにくべる薪が燃えて灰になり、窯の中を舞って器に降ったものがガラス質になって釉薬をかけたようになります」
薪にする樹木の種類によって仕上がりの色や風合いが異なるそうです。田山さんのこだわりは赤松の薪だけで焼くこと。灰釉が多くできる穴窯で5日間焼き続けます。
「松の木の薪には脂分や松ヤニが含まれています。それが高温の窯の中で自然の釉薬となって、淡く青みがかった緑色のガラス質の部分ができるのです。もちろん、仕上がりを予測して焼きますが、窯から出してみるまではどうできあがるかわからない。そこが面白いところです」
「粉引は成型した素地に白い泥をかけて焼くものです。白泥だけをかけて焼くとマットな質感になり、白泥の上に透明の釉薬をかけて焼くと光沢が出ます」
田山さんはマットなものと光沢のあるものを手がけていますが、こだわっているのは素地に赤土を使うこと。
「赤土に白泥を厚くかけるとまっ白になるのですが、泥のつき具合を調整してうっすらと赤土の色が見えるところを作って自然な感じが出るようにしています。焼いている間に窯変が起きてピンクやブルーっぽい模様を出すことも多いですね」
そしてもうひとつ、いま、田山さんが情熱を傾けているのが陶土で作る野鳥のオブジェ。鳥が好きで野鳥の会にも入っているのだそう。
「美大で彫刻を専攻したこともあって、図鑑を見ながら土でいきいきとした鳥を作るのが好きなんです。時間がかかりますが自分の中ではひたすら達成感があります (笑)」
陶房には小鳥サイズのものから重量級オオワシまで並んでいますが、どの鳥も羽を1枚1枚、写実的に再現してあっていまにも羽ばたかんばかりのリアルさです。
「羽根は数種の粘土を使い、金太郎飴の要領で模様を作ってから薄くスライスして、1枚ずつ作っています。鮮やかな色は着色していますが、自然に溶け込む茶色の野鳥なら陶土の色だけで表現できますよ。私が作った鳥を通して自然保護の役に立てたらいいなと思っています」と熱っぽく語ってくださいました。
作家のプロフィール
名前
田山健司(たやま けんじ)
出身地
笠間市
1988年 武蔵野美術大学彫刻科卒業
1997年 Artist camp in kasama 参加
1998年 陶グループ[From zero]参加
2002年 From zero展 つくば美術館にて
2003年 陶魂展 東海ステーションギャラリー
2004年 アール エポック展 天心美術館にて
笠間市に「田山陶房」を開いている。